お片付けでモノが捨てられない本当の理由

―30分の講演では伝えきれなかった、市職員向けセミナー活動レポート―

「片付けたいと思っているのに、なかなか捨てられない」
「モノが多いことが、ずっと気になっている」

そんな悩みを抱えている方は、決して少なくありません。

先日、長岡市職員労働組合 本庁支部 様よりご依頼をいただき、
お片付けランチセミナー「暮らしと心を整える、片付けのコツと仕組づくりの基本」
と題して講演させていただきました。

セミナー会場

日常の暮らしの中で「片付けたいと思いながら、後回しにしてしまう」
そんな声が多い中、今回のセミナーでは、
"空間を整えることが、心と行動にどんな変化をもたらすのか"を、実例とともにお話ししました。

講演時間は30分。
限られた時間の中でお伝えしたのは、
「どう片付けるか」よりも、
整理収納とはどうすることなのか?という考え方の部分です。

実際に多くの反響をいただいたのは、
整理・収納・片付けのテクニックよりも、
「モノを手放す判断のコツ」や「言葉の意味の違い」についてでした。

この記事では、
30分の講演ではどうしても伝えきれなかった内容を補足しながら、
「捨てられない自分を責めなくていい理由」を、
活動レポートとしてまとめていきます。

片付けたいのに、なぜ後回しにしてしまうのか

「片付けなきゃいけないのは分かっている」
「時間ができたらやろうと思っている」

そう思いながら、気づけば何日、何週間、
場合によっては何年も経ってしまう・・・

お片付けが後回しになる理由は、決して「怠けているから」でも
「意志が弱いから」でもありません。

忙しい日常の中では、
仕事や家事、家族のことを優先するほど、お片付けは後回しになっていきます。
「今すぐやらなくても困らないこと」という位置付けになりがちです。

もう一つ大きいのは、
片付けに対するハードルの高さです。

「始めたら時間がかかりそう」
「途中で嫌になるかもしれない」
「結局、捨てるかどうかで悩みそう」

こうしたイメージが先に立つと、
人は無意識のうちに行動を避けるようになります。
これは怠けているからではなく、
心が負担を避けようとしている自然な反応です。

さらに、片付けが後回しになる人ほど、
「一気にやらなきゃいけない」
「ちゃんと片付けなきゃ意味がない」
と思い込んでいることも少なくありません。

その結果、少しの時間では手をつけられず、
まとまった時間が取れないまま、片付けがずっと頭の片隅に残り続けます。

そして気づかないうちに、
「できていない自分」に目が向き、自信をなくしてしまうこともあります。

でも、少しだけ考えてみてほしいのです。
片付けが後回しになっているのは、
やる気がないからでも、性格の問題でもありません。

多くの場合、片付けに対するイメージや考え方が、
知らず知らずのうちに行動を止めているだけなのです。

自分以外の人のモノは、勝手に片付けられないという壁

片付けの相談を受けていると、よく聞く言葉があります。

「自分のモノならまだしも、家族のモノは勝手に触れない」
「職場でも、共有スペースは気になるけれど手を出せない」

セミナー後のアンケートで、
「お片付けについて、今一番困っていることは何ですか?」
とお聞きしました。

その中で、多く見られたのが
「家族や子どものモノが片付けられない」という声でした。

実際に寄せられた回答の一部をご紹介します。

・家族が捨てられないタイプで、物が部屋を占領しているので困っています。
・こどものものが溢れている。捨てるに捨てられない。
・子どもが大きくなるにつれ物が増えてしまう。
 親は捨ててもよいのではと思う物も、
 子どもにとっては大事な物だったり…
 子どもとの話し合いが大変。

これらの声から伝わってくるのは、
「片付けたい気持ちはあるけれど、
自分一人の判断では進められない
という現実です。

こうした悩みは、決して珍しいものではありません。
むしろ、片付けの相談の中でとても多いケースです。

自分のモノであれば、
使っているかどうか、必要かどうかを
ある程度は自分で決めることができます。

しかし、家族や子どものモノとなると話は別です。
勝手に捨てるわけにもいかず、
かといって置いておくと空間はどんどん圧迫されていく。

その結果、
「どうしたらいいか分からない」
「考えるだけで疲れてしまう」
という状態になり、片付け自体が止まってしまうことも少なくありません。

服や思い出の品などを捨てるか片付けるかで悩み、モノの要不要の判断に迷っている人のイメージイラスト

この悩みは、
片付けが苦手だから起きているのではなく、
関わる人が複数いる中で、
“捨てる/捨てない” “使っている/使っていない” “要/不要”の判断を一気に進めようとしている

ことが原因になっている場合が多いのです。

このあとお話しする
「片付け=捨てること」という思い込みも、
実はこうした行き詰まりと深く関係しています。

なぜ「片付け=捨てること」だと思ってしまうのか?

片付けが後回しになる理由をたどっていくと、
多くの人が、ある共通したイメージに行き着きます。

それが、
「片付け=モノを捨てること」
という思い込みです。

「片付けよう」と思った瞬間に、
頭の中で浮かぶのはこんな場面ではないでしょうか。

  • 要るか/要らないかを判断しなければならない
  • 思い出のモノを手放さなければいけない
  • 後悔するかもしれない決断を迫られる

こうしたイメージがあると、片付けは一気に“しんどい作業”になります。

実際、世の中の片付け情報の多くは、
「まず捨てましょう」
「使っていないモノは手放しましょう」
というメッセージから始まります。

そのため、
片付け=捨てる
捨てられない=片付けられない
という図式が、知らず知らずのうちに出来上がってしまうのです。

捨てることに迷いが生まれるのは、
そのモノに意味や思い出、役割があるからです。
それは決して悪いことではありません。

むしろ、大切にしてきたからこそ簡単に判断できないのは自然なことです。

それにもかかわらず、
「捨てられない自分はダメだ」
「だから片付けができないんだ」
と結論づけてしまうと、片付けはますます遠ざかってしまいます。

本来、片付けは
捨てるかどうかを決めることが目的ではありません。

暮らしの中で、
どんなモノが、どこにあって、
どう使われているのかを見直し、
自分や家族が過ごしやすい状態をつくること。

そのための手段の一つが「捨てる」であって、
必ず通らなければいけない関門ではないのです。

それでも多くの人が、お片付けに取りかかろうとすると
いきなり「捨てる・捨てない」の判断に向かってしまいます。

この背景には、整理・収納・片付けといった言葉の意味が、曖昧なまま使われている
という問題があります。

次のセクションでは、この言葉の違いを整理しながら、
なぜ順番を間違えると片付けが苦しくなるのかをもう少し具体的にお話しします。

整理・収納・片付け──言葉の違いが、片付けを難しくしている

片付けがうまく進まない理由の一つに、
使っている言葉の意味が整理されていないことがあります。

日常会話や情報の中では、
「整理」「収納」「片付け」「お片付け」といった言葉が、ほぼ同じ意味のように使われています。

ですが、これらを同じものとして扱ってしまうと、何から手をつければいいのか分からなくなり、
結果として片付けが止まりやすくなります。

まずは、私が講座や講演でお伝えしている基本的な定義から整理します。

整理・収納・片付けの違いを図で解説したイメージ。整理は使わないモノを取り除くこと、収納は使いやすく収めること、片付けは元に戻すことを示している

この3つは、似ているようで役割がまったく違います。

たとえば「片付けが苦手」と感じている方の多くは、
実は"片付け(元に戻す)"ができないのではなく、
整理や収納が終わっていない状態で
片付けをしようとしていることが少なくありません。

元に戻そうにも、

  • そもそも要不要が整理されていない
  • 使うモノの定位置が決まっていない

この状態では、
「戻す」こと自体が難しくなるのは当然です。

一方で、一般的に使われている「お片付け」という言葉には、
整理・収納・掃除まで含めた、家の中をきれいにする行為全体という意味合いがあります。

そのため、

  • 「片付けなきゃ」と思った瞬間に
    整理もしなければ、収納も考えなければ、掃除もしなければという状態になりやすい
  • 頭の中でやることが一気に増え、行動に移る前に疲れてしまう

ということが起こります。

ここで問題になるのは、
本来は別々に考えられるはずの行為を、
一度にやろうとしてしまうこと
です。

片付けは「元に戻す」だけ。
整理は「区別する・選ぶ」判断。
収納は「使いやすくする」工夫。

この違いを知らないまま、
「片付け=全部まとめてやるもの」と思ってしまうと、
片付けはいつまでも大変で、終わりの見えない作業になってしまいます。

この言葉の混乱こそが、
「片付け=捨てること」という思い込みを強め、
判断に疲れ、行動できなくなる原因にもなっているのです。

片付けの基本は整理から。でも、判断に時間をかけすぎない!

お片付けの基本は、整理から始まると私はお伝えしています。

ここで言う整理とは、
「不要なモノを取り除くこと」ですが、もう少し噛み砕くと、
使っている・必要なモノと、使っていない・不要なモノとの区別をつけることです。

使っているモノといないモノとを、何も考えずに同じ場所に何とか収めようとする。
これは、お片付けがうまくいかない典型的なパターンの一つです。

一方で、
「整理=すべて判断しきらなければいけない」
と思ってしまうと、お片付けは一気に重たくなります。

特に、

  • 手放すか迷うモノ
  • 思い出があって判断がつかないモノ
  • 今すぐ必要か分からないモノ

こうしたモノに時間をかけすぎると、お片付けそのものが止まってしまいます。

そこで大切なのが、
整理を「完結させよう」としないことです。

まずは、

  • 明らかに使っているモノ
  • これからも使うと分かっているモノ

この「要るモノ」だけを選び出し、
収納のステップへ進めばOKです。

一方で、
要らないと決めきれないモノ、
手放すか迷うモノは、
使うモノとは別の場所にまとめて保管します。

この時点では捨てるかどうかを決めなくて構いません。

使うモノが使いやすく収まり、
片付け(元に戻すこと)が回り始めてから改めて向き合えばいいのです。

整理は最初に必要。
でも、判断を無理に急ぐ必要はありません。

この順番を知っているだけで、お片付けはぐっと現実的になります。

モノが捨てられないは、片付けが苦手だからではなかった

今回の講演や、その後のアンケートを通して改めて感じたのは、
「片付けができない」と悩んでいる方の多くが、
やり方ではなく、考え方の部分でつまずいているということでした。

片付けたいのに後回しにしてしまう。
モノが捨てられない。
家族や子どものモノが片付けられず、どうしていいか分からない。

これらはすべて、
意志が弱いからでも、性格の問題でもありません。

  • お片付け=全部やらなければいけない
  • 片付け=捨てること
  • 整理・収納・片付けの役割が混ざったまま進めてしまう

こうした前提があると、
片付けはどうしても大変で、苦しいものになってしまいます。

片付けの基本は整理から。
でも、要/不要等の判断に時間をかけすぎる必要はありません。

要るモノと、迷うモノを分ける。
使うモノを使いやすくする。
片付け(元に戻すこと)が回る状態をつくる。

この順番や考え方を知るだけで、お片付けは「できないもの」から
「少しずつ整えていけるもの」へと変わっていきます。

30分の講演では、どうしても概要しかお伝えできませんでしたが、
この記事が、「自分にもできるかもしれない」
と思うきっかけになれば嬉しいです。

一人で悩まなくても大丈夫です

お片付けは、一人で頑張らなければいけないものではありません。

  • どこから手をつけていいか分からない
  • 判断に迷って止まってしまう
  • 家族のモノとの向き合い方に悩んでいる

そんなときは、
誰かと一緒に整理していくという選択肢もあります。

訪問お片付けサービスや、オンラインでのコンサルティングでは、
「捨てること」を急がせるのではなく、考え方や順番を整理しながら伴走しています。

Zoomを使ってオンラインで整理収納の相談を受け、片付けの進め方を解説している講師のイメージ

気になる方は、まずはお気軽にご相談ください。